モーツァルトのクラリネット協奏曲をピアノで その2

モーツァルトクラリネット協奏曲の第3楽章をピアノソロ用に編曲しています。

以前の記事はこちら

 

編曲にあたっての方針をだいたい考えた。なるべくスコアに沿った編曲をすること。構成は原曲に忠実に、和声もできるだけ原曲に準拠する。とはいってもスコアをそのまま大譜表に移植するような感じでもなく、ピアノという楽器の特性に合ったアレンジをして、独立したピアノ作品として仕上げること。難易度を下げるためだけの目的で音を変えたりしない。など。

スコアはIMSLPパブリックドメインの無料楽譜ライブラリー)で閲覧できるので興味のある人はどうぞ。 

ざっと分析してみた感じ、この楽章は大規模なロンド・ソナタ形式な模様。展開部と再現部の区分けが明確じゃなかったりして、かなり自由に書かれている。自由ではあるんだけど、隅々まで緻密に構築されててまたそれがスゴい。隙がないと思うよ。雑に言い切ると、モーツァルト is 天才。神。

 

以下、スコアとにらめっこしながら現在進行形で制作していってるピアノ版の楽譜を紹介。ついでに簡単な解説と分析。

 

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冒頭。ロンド主題の提示。序盤の見た目はまだシンプルでピアノソナタとかで普通にありそうな感じ。

同じ主題でもソロとトゥッティの違いがあるので響きを変えるように意識する。3度の連続が地味に難しい。

この主題の中に、楽章全体を構成するパーツとなる動機がいくつか示されてる。冒頭の同音でタッタッタッていうやつとか16部音符の順次進行の下降音列とか。

 

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経過句。軽快な16分音符のパッセージはピアノで弾いても楽しい。

細かいところは後回しにしてとりあえず最後まで作ろう、と思ってやっててもアーティキュレーションとか色々こだわってしまうね。

 

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第一ヴァイオリンのパッセージを思い切って左手に担当させた。ソロパートと対比させるための工夫。並行8度が出てきてしまったのでバスを追加することで緩和。響きは微妙だけどソロパートとの対比を優先した。

続く推移では16分音符の動機が8分音符に拡大されたり反行したりして自由に扱われてるのがわかる。

 

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43小節目からの推移、ソロパートを高音域に移動。この辺りからちょっとショパンっぽい。51小節目〜のトゥッティはピアニスティックなパッセージにアレンジした。難易度は高くないと思う。

46小節目に、57小節目で提示される副主題の動機がさりげなく先取りされている。一瞬のことだけど、明確に提示する前にこうやってチラ見せして次の展開を予感させてくるのが、ほんとセンス良い。

小終止を経て副主題の提示へ。

 

まだまだ序盤だけどひとまずここまで。

スコアを細部まで読み取って編曲していく作業は大変だけど楽しいな。時間も手間もかかるけどその分色々と勉強になってるなと感じる。 

その3へ続く。